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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2334号 判決 1967年10月27日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は控訴人松本は被控訴人の請求原因に対して控訴人柳原ハルの原判決事実摘示と同一の答弁を述べ、控訴人松本は控訴人柳原ハルから本件第四の建物を賃借して占有している。

立証(省略)

外は原判決事実摘示と同一であるからその記録をここに引用する。

理由

被控訴人主張の第一の土地が訴外南達庄助の所有であり、債権者東部塗料工業協同組合の申立により右土地について東京地方裁判所八王子支部昭和三十六年(ケ)第一六四号競売事件として競売手続が進行し昭和三十七年三月三十日付で競落人を被控訴人とする競落許可決定がなされ、被控訴人を上叙土地の取得者として同年五月二十四日同人のための所有権取得登記が経由されたことは当事者間に争いない。

被控訴人は右許可決定の確定により右各土地の所有権を取得した旨主張し、控訴人等は右決定当時申立債権及び抵当権は申立人の訴外組合から被控訴人に譲渡されていたから、右組合の申立により進行した競売事件の競落許可決定により被控訴人は右土地の所有権を取得するに由ない旨主張するのでその点について判断する。

成立に争いない甲第一号証、第二十七号証の一、当審証人南達庄助の証言によると、訴外東部塗料工業協同組合は訴外南達庄助の子が主となつて設立した訴外ミタテ塗料工事株式会社に資金を貸付けたが、右貸金債権担保のため庄助から本件各土地につき、債権極度額を金六百万円とする根抵当権の設定を受け昭和三十年七月三十日右根抵当権設定登記を経由していたところ、右貸付金の弁済を受けられなかつたので昭和三十六年十二月競売の申立をなし、同年十二月二十三日東京地方裁判所八王子支部から競売手続開始決定を得、同月二十五日その旨の登記が経由されたことを認めることができ、前記競落許可決定が確定し競落代金の支払われたことは前示甲第一号証、第二十七号証の一、二によつて推認される。

控訴人等は訴外協同組合は許可決定以前の昭和三十七年三月五日に被担保債権及び根抵当権を被控訴人に譲渡した旨主張するけれども仮に右事実があるとしても、競売手続は爾後、右譲渡を受けた者より競売申立の取下げ等をなさない限り、競売手続は続行さるべきものであり、又前記競売事件の許可決定による所有権移転登記経由までに申立人の訴外組合の被担保債権及び根抵当権が弁済その他の事由で消滅した事実は本件全証拠によつても認められないところであるから右譲渡によつて前記競落許可決定の確定による代金の支払がなされ競落人のための所有権取得登記が経由された以上右決定による競落人の競落物件の所有権取得には影響ないものと云わなければならない。

よつて控訴人等の右主張は採るに足らない。

本件第一の土地の上に控訴人柳原ハルが被控訴人主張のとおり第三、第四の建物を所有し、控訴人柳原孝一、松本剛雄がそれぞれ第三、第四の建物を使用占有していることは当事者間に争いない。

控訴人柳原ハルの建物所有による右土地の占有の正権限については何等主張立証しないところであるから控訴人等の建物所有又は占有による本件第一の土地の占有はいずれも不法占有という外ない。

以上の判示によると被控訴人の控訴人等に対する建物収去又は退去による本件第一の土地の明渡を求める請求は正当で、右請求を認容した原判決は相当であるから民事訴訟法第三百八十四条第一項により本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用の負担について、同法第九十五条、第八十九条、第九十三条を適用して主文のとおり判決する。

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